理由の一つは、大勢の仲間との共同生活では、プライバシーは欠けますが、話をすることで共感し合える利点があります。これが個別の住宅に移り、孤独がPTSDの引き金になるのです。
もう一つは、PTSDは環境が落ち着いてから出てきやすいものだからです。
PTSDとは、危機や危険に襲われたために起きる精神症状。
危機や危険に直面している間は、自分の身を守ることで精一杯なんですね。そのため、怒りや悲しみを感じるスキがありません。
その後、危険が去って安全な状態になると、心に余裕ができ、突然、心の底からこれまで後回しにされてきた悲しみや怒りがドーっとあふれてきます。
そうなんです。PTSDには時差があるのです。
これを「怒りは、恐怖のフタがとれたあとに出てくる」とも表現されます。つまり、安全になるまで、本来の感情はフタをされて、表に出てくることがありません。そのため、人によっては数ヶ月後〜半年後から症状が現れるといったことも珍しくないのです。
たとえば、いじめにあったお子さんたちに話を聞くと、
クラス替えでいじめっ子と離れることができたり、転校して安全な学校に移ったり、危険な状態が去ったとき、どうにもならない怒りがわき上がってきたと言います。そして、新しいクラスメートにイライラとした口調で当たったり、ケンカをしてしまったり。
「せっかく良い環境になったのに、今度は自分から問題を起こすなんてどうして?」と、親や周囲は驚きます。
しかし、いじめられている最中は、いかに自分の身を守るかで精一杯だったのです。
百世瑛衣乎
